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|創作のヒント

映画手法における“場違いな人(Fish Out of Water)”とは?設定で興味を湧かせる古典的脚本手法と脳科学からみた効果

「この設定、面白そう!」と思わせる瞬間を、自分の作品で実現するにはどうすればよいのでしょうか?

物語を書き始めたばかりの創作者が直面する課題の一つに、「設定だけで観客の興味を引くのが難しい」というものがあります。キャラクターの魅力や世界観を丁寧に描いても、なかなか「続きが気になる」という感覚を生み出せないと感じている方も多いのではないでしょうか。

そんな悩みを解決する手がかりとなるのが、ハリウッド映画で古くから使われてきた 「場違いな人(Fish Out of Water)」という脚本手法です。この手法は、主人公をその場にそぐわない状態に置くことで、観客に自然と「どうなるんだろう?」という期待感を抱かせる効果があります。

今回の記事では、この手法を取り入れている映画6作品・少年漫画2作品を紹介します。また、脳科学における予測誤差という知見から、この「場違いな人」の有効性を考えてみたいと思います。

この記事があなたの作品に少しでも貢献できれば幸いです。

「場違いな人(Fish Out of Water)」とは何か

「Fish Out of Water(水から出た魚)」という言葉は、文字通り「本来いるべき場所から外れた状態」を意味します。脚本術においては、主人公をその人物が最も不得意とする環境や、最もやりそうにない状況に置くことで、物語に自動的にドラマと緊張感を生み出す手法として知られています。

この手法の優れている点は、複雑なプロット展開や大がかりな仕掛けがなくても、設定そのものが観客の興味を引くという点です。人は心理的に「場違いな状況に置かれた人物がどう対処するのか」を見たくなるものです。

この手法が生み出す効果

  • 設定を聞いただけで「どうなるの?」と思わせる
  • キャラクターの成長や変化が自然に描ける
  • コメディ要素もドラマ要素も生まれやすい
  • 観客が主人公に共感しやすくなる

「Fish Out of Water」が光る映画作品

この手法がどのように機能するのか、実際の作品例を見てみましょう。いずれも「〇〇なのに、●●な状況」という構造が、物語の魅力を生み出しています。

インターンシップ

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中年の時計販売員なのに、Googleのインターン選考に挑戦する

リストラされた中年男性2人が、最先端IT企業Googleのインターンシップに参加するという設定。デジタルネイティブな若者たちの中で、オンラインを「オン・ザ・ライン」といってしまうような主人公たちがどう生き残るのか。この「場違い感」が物語全体を駆動していきます。

マイ・インターン

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定年を過ぎた70歳のおじさんなのに、人気ファッションサイトの若き女性CEOのアシスタントになる

長年の経験を持つ元企業重役が、ファッション系スタートアップで若い女性CEOの下でインターンとして働くことに。年齢、経験、立場、すべてが「逆転」している状況が、心温まるドラマを紡いでいきます。

レミーのおいしいレストラン

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ネズミなのに、高級フレンチレストランで料理人を目指す

料理の世界で最も嫌われる存在であるネズミが、一流シェフになることを夢見る。この究極の「場違い設定」が、観客に強烈なインパクトを与え、物語への没入を促します。

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!

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ロンドンのエリート警官なのに、何も起きない田舎町に左遷される

完璧主義で優秀すぎるがゆえに、犯罪がほとんど起きない平和な田舎町に飛ばされた警官。アクション満載のキャリアから一転、駐車違反の取り締まりが主な仕事になる。このギャップがコメディとサスペンスを同時に生み出します。

カーズ

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最先端のレーシングカーなのに、時代に取り残された田舎町に迷い込む

スピードと名声だけを追い求めてきた新人レーサーが、古き良き時代の価値観が残る小さな町で足止めを食らう。ハイテク vs ローテクという対比が、キャラクターの成長物語を際立たせます。

プラダを着た悪魔

ファッションに無関心なジャーナリスト志望なのに、超一流ファッション誌の編集アシスタントになる

ファッション業界に全く興味がない主人公が、業界トップの雑誌編集長の下で働くことに。価値観の違い、文化の違い、全てが「場違い」な環境での奮闘が、観客を引き込みます。

漫画でも使われる「Fish Out of Water」

この手法は映画だけでなく、漫画の世界でも効果的に使われています。特に週刊連載という形態では、第1話で読者の心を掴む必要があるため、「場違い設定」の威力は絶大です。

アイシールド21

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気弱でパシリの高校生なのに、アメフト部のエースランニングバックにされる

パシリとして鍛えられた俊足を持つものの、本来は臆病で非力な主人公が、肉弾戦のスポーツであるアメフトの世界に放り込まれる。この「最も向いていない人物が、その道に挑む」という構造が、物語の推進力となっています。

べるぜバブ

べるぜバブ モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

最強の不良高校生なのに、魔王の赤ん坊の育児をするはめになる

喧嘩最強で知られる男子高校生が、突然魔王の息子の子育てを押し付けられる。「育児」という最も不良らしくない状況に置かれることで、ギャグとアクションが自然に融合した独特の世界観が生まれています。

これらの作品を視聴するには

紹介した作品の多くは、動画配信サービスで視聴できます。創作の参考として作品を分析したい方には、複数のサービスを組み合わせることで、幅広いジャンルの映画にアクセスできるのでおすすめです。

Disney+(ディズニープラス)

ピクサー、ディズニー、マーベルなど、ストーリーテリングの最前線を走る作品が見放題。『ソウルフル・ワールド』をはじめとするピクサー作品の分析には必須のサービスです。

Amazon Prime Video

膨大な映画・ドラマのライブラリに加え、Amazonプライムの配送特典も利用可能。コストパフォーマンスに優れており、幅広いジャンルの作品研究に適しています。

Amazon Prime Video

Hulu

海外ドラマに強く、連続ドラマのストーリー構成を学びたい方に最適。10万本以上の作品が見放題で、テレビシリーズの脚本研究にも活用できます。

コナン

※各サービスの配信状況は時期により変動します。最新情報は各サービスの公式サイトでご確認ください。

脳科学からみた「場違い」がドラマを生み出す理由

ここまで見てきた作品に共通しているのは、「そのキャラクターが最もやりそうにないこと、最も似合わない環境に置くこと」が、ドラマを生み出す強力なエンジンになっているという点です。

では、なぜこの手法がこれほど効果的なのでしょうか。今回は、私たちの脳の仕組みからこの理由を考えてみたいと思います。

脳は「予測」を好み、「予測の外れ」に快感を覚える

人間の脳は、常に周囲の状況を予測しながら活動しています。「エリート警官ならば犯罪が多い都市で活躍するはず」「ファッション誌の編集部にいるのはおしゃれな人のはず」といった予測を、私たちは無意識のうちに立てているのです。

ところが「Fish Out of Water」の設定は、この予測を見事に裏切ります。エリート警官が田舎町に飛ばされ、ファッションに無関心な人物が一流ファッション誌で働く。この「予測誤差」が生じた瞬間、脳は強い興味と快感を覚えるのではないかと考えられています。

予測誤差がもたらす効果

  • 注意の喚起:「あれ?何か違う」という違和感が、作品への注目を集める
  • 好奇心の刺激:「この先どうなるの?」という疑問が、物語を追い続ける動機になる
  • 記憶への定着:予測が外れた情報ほど、脳に強く記憶される傾向がある
  • 感情の動き:意外性が笑いや驚き、感動といった感情を引き出す

「ギャップ」が生む二重の快感

「Fish Out of Water」が優れているのは、単なる一度きりの驚きで終わらない点です。この手法は、物語が進むにつれて二段階の快感を観客に提供します。

第一段階は、先ほど述べた「予測誤差の快感」です。設定を知った時点で「え、そんな組み合わせ?」という驚きを得られます。

そして第二段階が、「予測の修正と新たな発見の快感」です。物語が進むと、観客は次第に「場違いな主人公」の新たな一面や、その環境での意外な適応を目撃します。「ネズミだけど、実は料理の才能がある」「不良だけど、赤ちゃんの世話が上手くなっていく」といった展開が、私たちに新しい視点をもたらすのです。

この「予測→裏切り→新たな理解→さらなる発見」というサイクルが、観客を物語に引き込み続ける力になっていると考えられます。

創作に応用する際のポイント

この「予測誤差」の原理を創作に活かすには、まず「観客がどんな予測を立てるか」を意識することが重要です。

効果的な「場違い設定」を作る手順

  1. 1.
    主人公の特徴を明確にする

    性格、能力、価値観、外見など、観客が「こういう人物」と予測できる要素を設定

  2. 2.
    その予測を裏切る環境を選ぶ

    主人公の特徴から「絶対にこういう場所にはいないだろう」と思われる環境を考える

  3. 3.
    ミスマッチの理由に説得力を持たせる

    なぜその「場違いな状況」が生まれたのか、納得できる経緯を用意する

  4. 4.
    予測誤差を何度も生む

    設定だけでなく、物語の展開でも「意外な適応」「思わぬ才能」など、新たな驚きを用意する

たとえば、「内気で人見知りな主人公」を設定したなら、その人物を「大勢の前でプレゼンをしなければならない状況」や「初対面の人たちとチームを組む環境」に置くことで、強い予測誤差が生まれます。

この手法は、コメディでもシリアスなドラマでも、ジャンルを問わず応用できます。観客の脳が「予測と発見」のサイクルを楽しめるよう、キャラクターと環境のミスマッチを意識的に設計してみることで、そのギャップが、物語を動かす原動力になってくれるはずです。

脚本術をさらに深く学びたい方へ

「Fish Out of Water」のような脚本技法は、ハリウッドで長年研究されてきた物語構造の一部です。こうした技法を体系的に学ぶことで、作品の企画段階から「どうすれば面白くなるか」を考えられるようになります。

もし脚本術の基礎から応用まで学びたいと考えているなら、以下のような書籍が参考になるのではないでしょうか。

SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術

ハリウッドの脚本家ブレイク・スナイダーが執筆した、世界的ベストセラーの脚本術入門書です。「Fish Out of Water」を含む10のジャンル分類や、観客を引き込むための具体的なテクニックが、実際の映画例とともに解説されています。

特に「ビート・シート」と呼ばれる脚本の設計図は、初心者でもプロット構築に迷わなくなる実践的なツールとして知られています。映画だけでなく、漫画や小説の創作にも応用できる内容です。

SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術

まとめ:設定の時点で「続きが気になる」作品を

「場違いな人(Fish Out of Water)」という手法は、シンプルでありながら強力な脚本テクニックです。主人公を「最も似合わない環境」に置くだけで、観客は自然と「この先どうなるんだろう?」と興味を持ちます。

これから作品を創る際には、ぜひ主人公の特徴と環境のミスマッチを意識してみてください。そのギャップこそが、物語を動かす原動力になるかもしれません。

また、今回紹介した映画や漫画を実際に鑑賞し、「どのように場違い設定が機能しているか」を分析してみることも、創作力向上につながるのではないかと思います。scenalys(シナリス)では、こうした作品分析を記録・共有することもできますので、ぜひ活用してみてください。

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