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|創作のヒント

物語は「何を書くか」と「どう書くか」で分けられる。「分解思考」による物語性の高め方

ビジネスでは当たり前のはなしですが、物事を考える際には分解する手法が良くとられます。

たとえば、売上を上げたいとなった際は、まず売上を「売上=客数×客単価×来店頻度」に分解し、それぞれの分解要素に対して施策を検討していきます。

その方が、ただ漠然と売上について考えるよりも、具体的な施策を生みだせるためです。

物語を考えることにも似たようなところがあります。物語全体を一塊として見つめていると改善点が見えにくいことでも、「分解」すると視界がクリアになることがあります。

今回は物語性を高めたり、名作を効果的に分析することを目的としたときに、「その物語はどんな要素に分解できるか」という視点で考えていきたいと思います。

物語論で考える「物語の分解」

物語論という学問分野では、物語は大きく二つの要素から成り立つと考えられています。それは「物語内容」と「物語言説」です。これらはそれぞれ「ストーリー」「ディスコース」とも呼ばれ、以下の意味を持っています。

  • 物語内容(何を書くか)伝えたいメッセージや出来事
  • 物語言説(どう書くか)それをどう見せるか、演出や表現の方法

つまり、「観客に何を伝えたいか」という内容の部分と、「それをどのように表現するか」という手法の部分に分けて考えているということです。

この二つの視点で分解してみると、漠然と捉えていたシーンでも思考が広がり、名作の分析にも役立つのではないかと思います。

映画『グリーンブック』で見る分解思考の実例

では、具体的な例として、映画『グリーンブック』(2018年)の冒頭シーンをこのような分解思考で見てみたいと思います。

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人種差別が残る1960年代のアメリカを舞台にしたこの作品には、冒頭に以下のシーンがあります。

主人公(イタリア系白人)の自宅に、黒人の作業員がキッチンの修理に来る

主人公の妻は作業の終わりに、お礼として飲み物を出す

黒人の作業員が去った後、主人公はそのコップをゴミ箱に捨ててしまう

このシーンを「物語内容」と「物語言説」で分解すると、以下のようになります。

  • 物語内容(何を書くか)主人公は黒人に対して差別的な考えを持っている
  • 物語言説(どう描くか)黒人が口をつけたコップを、何も言わず捨ててしまう

「伝えたいこと」は同じでも、表現方法はいくつもある

「主人公が黒人差別的な考えを持っている」という『物語内容』を伝えるにも、表現方法(物語言説)は様々に考えられます。例えば:

  • 妻に飲み物を出すことをやめさせる
  • その場にいた友人に不平をこぼす
  • 相手に直接悪態をつく
  • 独り言で不満を漏らす

しかし、監督であるピーター・ファレリーは「何も言わず、さりげなくコップを捨てる」という表現を選びました。

なぜこの表現を選択したのでしょうか。

もし主人公が言葉で差別的な発言をしていたら、描写としてはありきたりすぎる気がします。何も言わず、さりげなく捨てるという表現だからこそ、主人公の内面にある偏見が静かに、しかし確実に観客に伝わっていくことになります。

このように考えることができたのも、「伝えたいこと」と「どう表現したか」を分解したことで、「どう表現したか」に焦点を当てたからです。

こういったワンシーンでも、分解して考えてみると色々思いつくことができますね。 思いつけるということは、それだけ選択肢が広がり、最適なものを選ぶことができるということです。 売上を上げるための施策が検討しやすいのと同じですね。

自分の創作にも応用してみる

「観客に伝えたいこと」と「その伝えたいことに対して、どう表現するか」という二つの視点で分解すると、創作における選択肢が見えやすくなります。

自分の作品の中で、なんとなく描いたシーンがあったとしましょう。そのシーンを改めて分解してみると、「ここで本当に伝えたいことは何だったのか」「それに対して、もっと効果的な表現方法はないか」という問いが生まれます。

もし創作に迷った際には、一度立ち止まって分解してみる。そうすることで、新たな視点や改善のヒントが見つかるかもしれません。

分解思考をもっと深く学びたい方へ

分解思考は、創作だけでなく、問題解決全般に応用できるとても汎用性の高い思考法です。この考え方をもっと体系的に学びたいと感じた方には、分解思考についてわかりやすく解説した書籍があります。

40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法

本書は、著者である寺澤伸洋氏が20代半ばから30代前半で上司から学んだ思考法をまとめたものです。ビジネス書ではありますが、分解思考について会話形式でわかりやすく書かれており、お勧めの一冊となっています。

「複雑な問題をシンプルに分解し、一つずつ解決していく」──この基本的な思考法は、物語創作においても、きっと強力な助けになるのではないでしょうか。

まとめ

物語を「何を書くか(物語内容)」と「どう書くか(物語言説)」に分解することで、創作における選択肢が明確になり、より効果的な表現を選べるようになります。

創作に行き詰まった時、一度立ち止まって分解してみる。そんなシンプルな思考法が、あなたの物語をより豊かにしてくれるかもしれません。

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